なぜそうなるか
車検で自賠責の証明書を出すのはなぜ?——自賠法は、証明書の保険期間が次の車検の満了日まで届いていないと、車検の処分をしないと定めていました
車検の見積もりを見ると、整備の代金とは別の欄に、税や保険の額が並んでいることがあります。その中の1つが、自賠責保険です。
車を持っている人なら、名前は聞いたことがあるはずです。ただ、なぜ車検のたびに一緒に手続きをするのかは、あまり考えずに済ませてしまいがちです。
任意で入る自動車保険とは、どこが違うのか。車検と、どういう形でつながっているのか。気になり出すと、分からないことがいくつも出てきます。
車検をいつから受けられるか、早めに受けたら有効期間はどう数えるかは、前の記事で道路運送車両法と施行規則から読みました。今回は、その車検に付いてくる保険の話です。
自賠責保険の決まりを置いているのは、自動車損害賠償保障法という法律です。e-Gov 法令検索でこの法律を開き、国土交通省の自賠責保険・共済ポータルサイトから2つの頁を読みました。
この記事では、条文と頁の文を2026年9月27日の時点のまま引きます。手元の車の保険期間がいつまでかは、車に備え付けている証明書で確かめてください。
・自賠責保険か共済の契約がない自動車は、運行の用に供してはならない(第5条)
・証明書を備え付けていない自動車も、運行の用に供してはならない(第8条)
・車検の処分を受けるときは、証明書も提示する(第9条)
・証明書の保険期間が次の有効期間の満了日まで重なっていないと、処分はされない
・補償の対象は人身事故の対人賠償だけで、物損は入らない
自賠責保険には、必ず入らないといけないの?
自賠責は、入るかどうかを選べる保険?
条文の見出しは「責任保険又は責任共済の契約の締結強制」でした。本文は一文です。
自動車は、これについてこの法律で定める自動車損害賠償責任保険(以下「責任保険」という。)又は自動車損害賠償責任共済(以下「責任共済」という。)の契約が締結されているものでなければ、運行の用に供してはならない。
違反したときの罰則も、同じ法律の第86条の3にあります。その第一号が、第5条に違反したときです。
次の各号のいずれかに該当する場合には、その違反行為をした者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
国土交通省の頁も、有効期限が切れたまま乗った場合について同じ罰を書いていました。
自賠責保険・共済には有効期限があり、期限が切れたまま更新せずに運転すると、処罰の対象になります。
更新せずに乗った場合、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります。
車検のとき、証明書を出すのはなぜ?
車検の窓口で、自賠責の証明書を求められるのはどうして?
証明書は、保険料を払ったときに保険会社から渡されるものです。第7条がそう定めていました。
保険会社は、保険料の支払があつたときは、保険契約者に対して、当該自動車につき自動車損害賠償責任保険証明書を交付しなければならない。
受け取った証明書は、車に備え付けておくことになります。第8条の文です。
自動車は、自動車損害賠償責任保険証明書(前条第二項の規定により変更についての記入を受けなければならないものにあつては、その記入を受けた自動車損害賠償責任保険証明書。次条において同じ。)を備え付けなければ、運行の用に供してはならない。
第9条の第1項は、道路運送車両法の条をいくつも挙げて、その処分を受けようとする人に証明書の提示を求めています。挙がっている条の中に、継続検査の第62条も入っていました。そして第5項が、提示がないときの扱いです。
当該行政庁は、自動車損害賠償責任保険証明書の提示又はその写しの提出がないときは、第一項の処分をしないものとする。
国土交通省の頁は、この関係を短く書いていました。
自賠責保険・共済に加入していないと、車検を受けることができません。
保険期間は、いつまであればいいの?
車検の日に証明書があれば、それでいいの?
第5項の2つ目の文は長く、ここでは中身を自分の言葉で書きます。提示された証明書に書かれた保険期間が、車検証に記録する有効期間の満了する日までの期間の全部と重複していないときも、前の文と同じく処分をしない、という内容でした。
車検の日に保険が生きているだけでは足りず、次の車検の満了日まで続いている必要がある、ということです。
前の記事では、満了日の2か月前から受けた場合、次の有効期間は満了日の翌日から数えると読みました。この2つを並べると、早めに受けた場合も、自賠責の保険期間はその数え方で決まる新しい満了日まで届いている必要がある、と読めます(2つの条文を並べた当方の読みです)。
自賠責は、何を補償するの?
事故を起こしたら、自賠責で全部まかなえるの?
頁は、自賠責の特徴を6つ並べていました。その1つが、補償の範囲です。
物損事故は補償の対象にはなりません。自賠責保険・共済の対象は、人身事故による対人損害賠償のみとなります。
保険料の決まり方についても、同じ頁に説明がありました。
保険料(共済掛金)は、契約者の属性や事故歴等に関わらず、車種(自家用乗用車、軽自動車、原動機付自転車等)ごとに一律に設定されており、損害保険会社(共済組合)の利益を含まない最低限の保険料(共済掛金)となっています(ノーロス・ノープロフィット原則)。
車の持ち主の年齢や事故歴で変わらず、車種ごとに一律の額になっている、という説明です。
この記事で確認したこと
・契約が締結されていない自動車は、運行の用に供してはならない(第5条)
・保険料を払うと証明書が交付され(第7条)、備え付けなければ運行の用に供してはならない(第8条)
・車検の処分を受けるときは、証明書の提示も要る(第9条第1項)
・提示がないとき、保険期間が次の有効期間の満了日までの全部と重ならないときは、処分をしない(第9条第5項)
・補償の対象は人身事故の対人賠償だけで、保険料は車種ごとに一律
よくある質問
自賠責の保険料はいくらですか
今回読んだ条文と頁は、保険料が車種ごとに一律で決まるという仕組みまでで、額には触れていませんでした。額は、契約する保険会社や共済組合で確かめてください。
任意の自動車保険に入っていれば、自賠責は要りませんか
第5条は、自賠責保険か自賠責共済の契約がない自動車を運行の用に供してはならないと定めています。任意保険に入っていることで、この決まりが外れるという文は、読んだ範囲にはありませんでした。
車検のときの費用は、ほかに何がありますか
前の記事で読んだ国土交通省の案内は、検査手数料のほかに税や保険の費用がかかると書いていました。この記事で読んだのは、そのうち自賠責の決まりだけです。
この整理が変わる条件
- 自動車損害賠償保障法が改正された場合(本記事は2026年9月27日に e-Gov 法令検索で読んだもの)
- 国土交通省が、自賠責保険・共済ポータルサイトの頁を改めた場合
- 原動機付自転車や検査対象外の軽自動車の場合(第9条の2の保険標章など、別の決まりがあります)
出典
- 自動車損害賠償保障法(昭和三十年法律第九十七号)第5条・第7条・第8条・第9条・第86条の3(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/330AC0000000097
- 国土交通省 自賠責保険・共済ポータルサイト「自賠責保険・共済ってどんなもの?」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/about/overview/index.html
- 国土交通省 自賠責保険・共済ポータルサイト「自賠責保険・共済の有効期限切れに注意」 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jibaiseki/about/jibaiseki_renew/index.html
車検の前に、車に備え付けている証明書の保険期間の終わりの日を見ておいてください。
当方が上の出典を引いて確かめた日: